SUMMARY
要点をまとめると
01「特段の変化なし」は、大規模な地震の可能性が平常時と比べて高まった様子はない、という意味です。
02安全という意味ではありません。
03平常時でも今後30年以内の発生確率は高いと評価され、切迫性が高い状態です。
04臨時情報なしに突然起きることもあるので、備えを進めます(2026年11月1日時点)
TO DO
今すぐやること
- 1市区町村が推進地域に入るか調べる
- 2ハザードマップで自宅と職場を見る
- 3避難場所まで一度歩いてみる
- 4家具を固定し、備蓄を用意する
そもそもゆっくりすべりとは?
プレートの境目が、地震のように急にではなく、数日から数年かけてゆっくりずれる現象です。
たとえるなら重い家具を一気に動かすのではなく、少しずつ押してずらすような動きです。
- 1深い場所で起きるプレート境界の深い場所がゆっくりずれる
- 2小さな変化で分かるひずみ計やGNSSで地面のわずかな動きを観測する
- 3毎月確かめる評価検討会で普段との違いを評価する
気象庁「用語の解説」をもとに、やさしく言い換えています。
この記事をスライドで理解する(6枚)
1 / 6南海トラフ「特段の変化なし」の意味 10月7日の発表を解説
特段の変化なしなら、しばらくは安心ですよね?
安心とは言えません。平常時と比べて高まっていないという意味で、平常時の切迫性は高いとされています。
そなえこの記事でわかること(3行まとめ)
「特段の変化なし」は「安全」という意味なのか
「南海トラフ地震臨時情報」が出るのはどんなときか
まず、これだけ。
- 1市区町村が推進地域に入るか調べる
- 2ハザードマップで自宅と職場を見る
- 3避難場所まで一度歩いてみる
- 4家具を固定し、備蓄を用意する
「南海トラフ、特段の変化なし」。毎月のようにこの言葉を見て、「じゃあ安心なのかな」「でも本当は危ないと聞いた」と迷う人は多いと思います。発表の文章には「ゆっくりすべり」「深部低周波地震」など、難しい言葉も並びます。
この記事では、気象庁と内閣府の公式資料を2026年11月1日時点で確かめた内容をもとに、10月7日の発表の読み方をまとめます。難しい言葉は順番に言い換えます。次回の評価は11月9日に予定されています。
01この記事でわかること(3行まとめ)
- 10月7日の発表の結論は、大規模な地震の可能性が平常時と比べて高まったと考えられる特段の変化は観測されていない、というものです。
- これは「安全」という意味ではありません。平常時でも今後30年以内の発生確率は高いと評価され、切迫性が高い状態とされています。
- 日頃の備えが大前提です。臨時情報が出ないまま突然起きることもあります。
0210月7日の発表は何と言っているのか
気象庁は南海トラフ周辺の地震活動や地殻変動を定期的に評価しています。地殻変動とは、地面のわずかな動きのことです。2026年10月7日に開いた評価検討会の結果を、同じ日の17時に「南海トラフ地震関連解説情報」として発表しました。
結論の一文は次のとおりです。
- 現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。
根拠として、次のような観測結果が挙げられています。
| 分野 | 10月7日の発表の内容 |
|---|---|
| 目立つ地震 | 南海トラフ周辺では、特に目立った地震活動はなかった |
| プレート境界付近の細かな揺れ | 四国と東海で深部低周波地震(微動)を観測した |
| 浅い場所の揺れ | 日向灘とその周辺で、8月中旬から9月上旬に浅部超低周波地震を観測した |
| 地面のわずかな動き | 微動とほぼ同じ時期に、ひずみ計でわずかな変化を観測した |
| 長い期間の動き | 御前崎、潮岬、室戸岬の周辺で沈む傾向が続くが、傾向に大きな変化はない |
気象庁は、想定震源域のプレート境界の固着(くっつき具合)に特段の変化を示すデータは得られていない、と判断しました。想定震源域とは、南海トラフ地震の震源になると想定されている範囲です。
03「特段の変化なし」は「安全」という意味なのか
特段の変化なしなら、しばらくは安心ですよね?
安心とは言えません。平常時と比べて高まっていないという意味で、平常時の切迫性は高いとされています。
そなえ南海トラフの平常時は、今後30年以内の発生確率が高いと評価されています。
この点がいちばん大切です。比べている相手は「平常時」です。そして、南海トラフの平常時は「何もない状態」ではありません。
発表文には注が付いています。南海トラフ沿いの大規模な地震(マグニチュード8から9クラス)は、平常時でも今後30年以内に発生する確率が高いと評価されています。さらに、昭和東南海地震と昭和南海地震から約80年がたっており、切迫性の高い状態だと書かれています。
| よくある読み方 | 資料に沿った読み方 |
|---|---|
| 変化がないから安全 | 平常時より高まった様子はない。平常時の可能性は残っている |
| 発表があるから地震が近い | 評価検討会は原則毎月1回開かれており、定例の発表である |
| 異常があれば事前に分かる | 異常が観測されないまま突然起きることもある |
南海トラフ地震は、駿河湾から日向灘沖にかけてのプレート境界を震源域として、おおむね100〜150年の間隔で繰り返し起きてきた地震です。気象庁によると、最大クラスの地震が起きた場合、静岡県から宮崎県にかけての一部で震度7となる可能性があります。関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域には、10mを超える津波が想定されています。
これは科学的に想定される最大クラスの話で、毎回この規模になるという意味ではありません。ただ、最大クラスを知っておくと、自分の住む場所の危険を調べるきっかけになります。
04評価検討会はいつ開かれているのか
「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」は、有識者が観測データを確かめる会議です。委員は6名の有識者です。国土地理院や防災科学技術研究所などの関係機関も加わっています。
- 定例の会合は原則毎月1回開かれます。平常時から観測データの状況を把握するためです。
- 臨時の会合は、観測データに異常が現れたときに、南海トラフ地震との関連を緊急に評価するために開かれます。
つまり「特段の変化なし」は、毎月の定例の結果として出てくることが多い言葉です。突然の発表ではないので、見かけても慌てる必要はありません。10月7日の参考資料は第110回の評価検討会のものでした。次回は2026年11月9日の予定です。最近1週間の地震活動の概況は、気象庁が毎週金曜日の午後に出しています。
05「ゆっくりすべり」とは何か
「継続中」って書いてあると怖いです。危ないんですか?
発表時点で続いていたという意味です。気象庁は、こうした現象は従来から繰り返し観測されてきたと説明しています。
そなえ南海トラフでは、海のプレートが陸のプレートの下に沈み込んでいます。普段はプレートの境目がくっついていますが、深い場所では、地震のような急な動きではなく、ゆっくりずれることがあります。これが「ゆっくりすべり」です。
| 言葉 | 気象庁の説明 |
|---|---|
| 長期的ゆっくりすべり | 深さ20〜30kmの場所が、数か月から数年かけてゆっくりすべる。数年から十年程度の間隔で繰り返す |
| 短期的ゆっくりすべり | 深さ約30〜40kmの場所が、数日から1週間程度かけてすべる。数か月から1年程度の間隔で繰り返す |
| 深部低周波地震(微動) | 短期的ゆっくりすべりとほぼ同じ時期、ほぼ同じ場所で観測される、通常の地震より周期の長い揺れ |
10月7日の発表で挙げられた主な微動は次の5つです。
- 四国東部:8月21日から9月3日、9月6日から9月8日
- 東海:9月3日から9月4日
- 四国中部:9月17日から9月24日
- 四国西部:9月27日から継続中
- 東海:10月2日から継続中
「継続中」と書かれていると不安になりますが、これは発表時点で続いていたという意味です。気象庁は、これらの微動と短期的ゆっくりすべりは、従来からも繰り返し観測されてきた現象だとしています。
06「浜名湖の東側」への移動はどう読めばいいのか
発表文には、もう一つ長く続いている現象が書かれています。静岡県西部から愛知県東部にかけて、2022年初頭から、それまでと異なる地殻変動が観測されているというものです。
気象庁はこれを、渥美半島周辺から浜名湖周辺にかけての深い場所で起きている長期的ゆっくりすべりによるものと推定しています。そのすべりの中心は、渥美半島周辺から浜名湖の東側に移動しました。長期的ゆっくりすべりも、従来から繰り返し観測されてきた現象とされています。
日向灘の浅部超低周波地震については、ゆっくりすべりに起因する可能性があるとしたうえで、発生の頻度や規模などは今後も観測と研究が必要だと書かれています。分かっていないことは分かっていないと書かれている点も、資料を読むときの大事な手がかりです。
なお、通常と異なる場所や起き方のゆっくりすべりが観測された場合は、話が変わります。気象庁は、そのときは南海トラフ地震の可能性が平常時より高まったと評価できる場合があるとしています。毎回の発表はこの点を見るためのものでもあります。
07「南海トラフ地震臨時情報」が出るのはどんなときか
今回の解説情報と臨時情報は同じものですか?
違います。解説情報は毎月の定例の結果で、臨時情報は異常な現象が観測された場合などに出ます。
そなえ南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合などに出るのが「南海トラフ地震臨時情報」です。異常な現象としては、マグニチュード6.8以上の地震や、ひずみ計の有意な変化などが想定されています。臨時情報には、次のキーワードが付きます。
| キーワード | とる行動の例 |
|---|---|
| 調査中 | 個々の状況に応じて避難などの準備を始め、今後の情報に注意する。調査結果は最短2時間後に発表される |
| 巨大地震警戒 | 地震後の避難では間に合わない可能性のある住民は1週間の事前避難を行う。ほかの人も特別な備えをする |
| 巨大地震注意 | 日頃の備えの再確認に加えて、特別な備えをする。必要に応じて自主的に避難する |
| 調査終了 | 地震に注意しながら通常の生活を行う。可能性がなくなったわけではない |
特別な備えとは、すぐに逃げられる態勢を保つこと、非常持出品をいつも持ち歩くことなどです。呼びかけの対象は、国が指定した「南海トラフ地震防災対策推進地域」です。高さ3m以上の津波や震度6弱以上の揺れが想定される地域などをもとに指定されています。
10月7日の発表は定例の「解説情報」で、この臨時情報ではありません。名前が似ているので気をつけましょう。
08臨時情報は過去に出たことがあるのか
あります。気象庁の発表履歴には、次の臨時情報が載っています。2024年8月には「巨大地震注意」が出ました。これを覚えている人もいるでしょう。
| 発表の日時 | 情報 |
|---|---|
| 2024年(令和6年)8月8日17時00分 | 南海トラフ地震臨時情報(調査中) |
| 2024年(令和6年)8月8日19時15分 | 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意) |
| 2025年(令和7年)1月13日21時55分 | 南海トラフ地震臨時情報(調査中) |
| 2025年(令和7年)1月13日23時45分 | 南海トラフ地震臨時情報(調査終了) |
発表の基準も決まっています。想定震源域内のプレート境界でモーメントマグニチュード8.0以上の地震が起きたと評価すると「巨大地震警戒」です。決められた範囲でモーメントマグニチュード7.0以上の地震が起きたと評価した場合や、通常と異なるゆっくりすべりが起きたと評価した場合は「巨大地震注意」です。どちらにも当てはまらないと評価すると「調査終了」となります。
呼びかけはいつまで続くのか
巨大地震警戒や巨大地震注意の呼びかけの中心は、地震から1週間です。巨大地震警戒の場合は、最初の1週間が過ぎると、さらに1週間は巨大地震注意の対応に切り替わります。
この1週間という長さは、地震の可能性が時間とともに下がることに加えて、人々が対応を続けられる限度も考えて決められています。気象庁から「解除」にあたる情報が出るわけではありません。1週間が過ぎても可能性がなくなるわけではないので、家具の固定や避難場所の確認を続けながら日常生活を送ります。
09情報が出ないまま突然起きることもあるのか
あります。気象庁は、南海トラフ地震の発生前に異常な現象が観測されるとは限らないと説明しています。地震の時期や場所、規模を確度高く予測することは難しいとも書いています。
- 臨時情報が出ないまま、突然大きな地震が起きることがあります。
- 臨時情報が出ても、大きな地震が起きないことがあります。
- 臨時情報は、地震の予知ではなく、可能性が高まったと知らせる情報です。
過去の例では、東側で大規模な地震が起きたあと、1854年には32時間後、1944年の昭和東南海地震のあとには約2年後に、西側で大規模な地震が起きました。続けて起きるとしても、間隔には大きな幅があります。だから、毎月の発表に一喜一憂するより、普段の備えを進めるほうが役に立ちます。
10今日からやることは何か
- 住んでいる市区町村が南海トラフ地震防災対策推進地域に入るか調べます。内閣府が市町村の一覧を出しています。
- 自宅や職場が津波の浸水想定に入るか、ハザードマップで見ます。
- 避難場所と避難経路を確かめ、一度歩いてみます。
- 家具を固定します。
- 家族との連絡手段を決めます。
- 備蓄と非常持出品を用意します。
気象庁は大きな地震が起きたら、まず自分の身を守る行動をとるよう呼びかけています。津波警報などが出た地域では、津波への行動が最優先です。警報が解除されるまで安全な場所にとどまってください。
11確かめる先・相談先
毎月の評価と臨時情報の発表履歴は、気象庁の「南海トラフ地震について」のページから確かめられます。国の対策と臨時情報の防災対応は、内閣府の「南海トラフ地震対策」のページにあります。
避難場所や、事前避難の対象地域かどうかは、お住まいの市区町村に確かめてください。避難の判断は、公的機関の呼びかけと市区町村の案内を優先しましょう。
よくある質問
「特段の変化なし」は安全という意味ですか?
安全という意味ではありません。平常時と比べて可能性が高まった様子はないという意味で、平常時でも今後30年以内の発生確率は高いと評価されています。
南海トラフの発表はどのくらいの頻度で出ますか?
評価検討会の定例の会合は原則毎月1回です。その結果が南海トラフ地震関連解説情報として発表されます。次回は2026年11月9日の予定です。
解説情報と臨時情報はどう違いますか?
解説情報は定例の評価の結果などを伝えるものです。臨時情報は異常な現象が観測された場合などに出され、巨大地震警戒や巨大地震注意などのキーワードが付きます。
臨時情報が出なければ地震は起きませんか?
そうとは限りません。気象庁は、異常な現象が観測されないまま突然起きることもあると説明しています。日頃の備えが大前提です。
南海トラフ地震は予知できますか?
気象庁は、発生の時期や場所、規模を確度高く予測することは難しいとしています。臨時情報も予知ではなく、可能性が相対的に高まったと知らせる情報です。
用意するなら
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次にやること
出典(10件)
- 気象庁「南海トラフ地震関連解説情報について-最近の南海トラフ周辺の地殻活動-」(令和8年10月7日)
- 気象庁「南海トラフ地震について」
- 気象庁「南海トラフ地震に関連する情報について」
- 気象庁「『南海トラフ地震臨時情報』が発表されたときの防災対応」
- 気象庁「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会とは」
- 気象庁「用語の解説」
- 気象庁「南海トラフ地震に関連する情報 発表履歴」
- 気象庁「よくある質問集(南海トラフ地震臨時情報について)」
- 内閣府「南海トラフ地震対策」
- 気象庁「地震から身を守るために」
公的機関などの資料をもとに編集部がまとめました。専門家の監修は受けていません。

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